(前編からの続きです。)
案内された診察室の中には、少し緊張した面持ちのお医者さんがいました。
椅子に通された私たち。
旦那は、「よろしくお願いします。」と一礼して、
いつも通りに振る舞おうとしていました。
私も挨拶をしましたが
他の人に聞こえそうなくらい心臓がとんでもなく早く打ち、
とても空気が薄い感じがしていました。
でも、旦那もきっと同じはず。
私も、ちゃんとしなくては。
カメラの邪魔をしていたものは

「消化器内科の◯◯と申します。」
先生はパソコンのモニターに、一枚の写真を映しました。
旦那の腸の中の写真でした。
何か大きい、いびつなコブのようなかたまりが写っている。
「先ほど内視鏡カメラで撮った写真ですが、どうやらこのかたまりがですね、
邪魔をして、カメラが通れなかったんですが‥。
まだ、病理検査の結果が後日なので
断定はまだ出来ないのですが‥
これはちょっと
ご主人
悪い病気の可能性が高いです。」
え?
旦那「それはというと‥腫瘍とかですか?」
先生「腫瘍です。出血もしていますし、
形状をみても、おそらく高い確率で悪性の可能性が高いでしょう。」
悪性の腫瘍‥。
そう言われても信じられない

何のこと言ってんの?
先生「まだ確定できませんが、大腸がんの可能性が‥。」
私「でも、まだ良性かもしれないんですよね?!」
先生「そうですね、確定ではありませんが‥でもおそらく。」
そして先生は旦那に
喫煙歴や飲酒量などを聞き始めました。
旦那本人は、なんとか気丈に受け答えしていると言うのに
情けないことに私は気が遠くなってしまって、一瞬クラッとしてしまいました。
そしてドラマのように泣き叫ぶわけでもなく、現実感もなく、ただ二人の会話が耳に入ってきていました。
いろんな話をしたあと
後日、病理検査の結果を聞くための診察予約などをして、
‥私たちは病院の外に出たのでした。
私は下を向いていましたが
ふと旦那の顔を見上げると
今まで見たことがないくらい悲しそうな顔をしていました。
旦那を元気づける!

診察中は、すごくがんばっていたんだね。。。
中年夫婦だけど一緒に手をつないで帰りました。
‥旦那の手から悲しみが伝わってくる。
二人とも、心がうつろだけれども。
なんとか旦那を元気付けなくては!
私「大丈夫だよ!まだ良性か悪性か確定してないしさ。」
旦那「うん。」
「治療して元気になったら、また一緒に海に行こうね。大丈夫、私がついているから安心して!」
「そうだな。」
そうやって必死に旦那を励ましていました。
だけど周りの風景が

だけど帰り道も行きと変わらず晴れているのに
なぜか帰りの風景が
‥一瞬でモノクロの風景に変わってしまったのを憶えています。
あの日の太陽の陽射し、乾いた風の感触、忘れられません。
いつもだったら気持ちいいと感じるのに
二人してとてもさみしい気持ちで
風に吹かれながら歩いていました。
【追記】
あの時の、旦那や私の反応もそうなのですが
先生の伝え方も、それは人によりけりなんでしょうが
ドラマのように重々しく一呼吸おいた後に「‥ガンです。」みたいな言い方ではありませんでした。
むしろもう少し普通な感じというか
会話しながら言う感じでした。
私たちも、ドラマのようにワッと泣き叫ぶわけでもなく‥
むしろそこまでのパワーが出てこない無力感というか。
はたから見たら、ちょっと淡々と見えたかもしれません。
だからドラマで、それ系の場面を見かけると「うーーむ‥‥。」と感じるようになりました。
性格的な違いかもしれませんが。(´∀`=)
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